子ども分野の新しい資格について

厚生労働省は4月23日、社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会(委員長山縣文治・関西大教授)を開催。今後、子ども分野の新たな資格などについて議論する。会合で厚労省は、児童養護施設職員が新資格を取得する場合、大学や専門学校などで学ぶことを必須とする案を明らかにした。  同委員会が開かれたのは2019年8月以来。会合で厚労省は、子ども分野の新たな資格や児童相談所の一時保護、権利擁護などについて先行して議論する方針を示した。  

新資格をめぐっては、厚労省のワーキンググループが2月、新たな資格創設を盛り込んだ報告書をまとめている。ただ、国家資格化については結論を先送りし、建て付けについても精神保健福祉士のように社会福祉士と並列にする案と、スクールソーシャルワーカーのように社会福祉士に上乗せする案の両論併記としていた。  

今回厚労省は、新資格を取得する際のルート案を提示した。  

現在働く施設職員が新資格を取得する場合、大学や専門学校などの養成施設で学ぶことを必須としている。しかし自治体職員については、経過措置を設けて、講習会を受ければ受験資格を付与する。このほか、福祉系大学などで指定科目を修めるルートなども示したが、いずれも試験に合格する必要がある。  

また新資格は児童福祉法に位置付ける方針も示した。新資格のメリットには、採用後のキャリアパスや処遇改善の根拠になることを挙げた。  

今後、同委員会は職能団体からヒアリングも行う予定。なお、委員会開催に先立ち、日本社会福祉士会と日本精神保健福祉士協会は4月21日、子ども家庭局長に対し、新たな国家資格創設に反対する要望書を提出している。

このほか会合では、厚労省が社会的養護の現状について報告。19年10月時点での児童養護施設入所者は2万4564人で、10年前より2割減少していた。同様に乳児院も1割減の2733人だった。  

一方、19年度末時点の里親などへの委託は7498人と10年で2倍に。ただ同時点での里親等委託率は21・5%と前年より1ポイント増にとどまった。  

会合では奥山眞紀子・日本子ども虐待防止学会理事長が、里親委託率が上がっていない点を問題視し「最近、施設とうまくいかない不調が多い。施設はもっと高機能化を進めるべき」と語った。  

これに対し、桑原教修・全国児童養護施設協議会長は「実態として里親不調も多い」と反論。背景には不十分なアセスメントがあるとして、児相の体制強化を求めた。横川哲・全国乳児福祉協議会副会長も里親不調の現状に言及し「里親委託率を上げる上で課題は何なのか明確に示す必要がある」と話した。  

さらにオブザーバー参加の河尻恵・全国児童自立支援施設協議会顧問は、里親委託率は目標値ありきではなく、子どもの最善の利益を前提にすべきだと主張した。  

会合は今後、虐待予防策についても並行して議論。夏以降に中間整理をし、年内にも最終取りまとめを行う予定。