全制的施設の原理

いよいよ暇なので片付けを始めた。ほこりまみれの『障害学への招待』が出てきた。里親になったばかりの頃に影響を受けた本である。本書では、ゴッフマンの『アサイラム』が紹介されている。こんな風に書いてある。

「全制的施設の原理は、一般社会からの隔離と落差である。入所者は、施設に入ると同時にこれまでの生活との断絶を余儀なくされる。それどころか、入所する前までは市民として当然自分のものであったもの(私物、財、職業、趣味、人間関係、生活史、自己尊厳、日常生活や人生の自己決定権など)を体系的に剥奪され、その結果、自己のアイデンティティは「辱め」られ「貶め」られ「屈辱」を受けるという「無力化の過程」をたどるのである。施設のスタッフはこうして剥奪したものを、今度は「特権」として被収容者に与える権力をもつ存在になる。つまりそこで働いている力学は一般社会からの隔離を通した剥奪と、剥奪されたものを特権へと転化することである。

そして、被収容者の画一的な管理というより「支配」と呼んだ方が適切ではないかと思わせるほどだ、という。

被収容者は一種の文化喪失状態に陥る。すなわち、バスに乗ることも、お金を使うことも、食べ物や服を選んだりするといった外の世界での慣習的行動も出来なくなる。

これらの言説は精神病院についてのものだが、社会的養護の一時保護所に似ていないだろうか。さらには、児童養護施設についても言えそうだ。