社会的養育の視点

奥山さんのスピーチを聞いた。多くの統計資料から、今の子どもたちの現実を知らせてくれる。社会的養護の世界でああでもないこうでもないとやっているとき、もっと確かな視点を教えてくれる。それは、ひと言でいえば、子どもの養育に社会全体が関わる必要があるということだ。以下、その一部。

家庭の状況について、全体的には核家族化が進み、夫婦共働きが増加、にもかかわらず夫の家事に費やす時間は少ない、世帯収入は低下傾向、貧困率の増加、子どもの貧困も増加傾向などが明らかにされる。

そのうえで、子どもはどうなのか。乳児死亡は非常に少ないレベルにある、しかし子どもの死亡原因に占める自殺が無視できない(10-14歳では2位、15-19歳では1位)、自殺による死亡率は他の年齢では減っているが18歳以下では増加(わかっている原因は「家族からの躾・叱責が多い」)。
子どもの状況についてまとめると、乳児期に命は助かるが、その後に辛さが続く。
子どもの非行や犯罪についてみると、非行や犯罪は著しく低下、一方で家庭内暴力が増加している、小学生 学校での子ども間暴力の増加。
新しい危険が登場している。大人にとって便利なものが子どもにとって危険なものになっている、子どもへの対応は常に後手になっている、大きな事件があって初めて気づかされる、子ども目線が大事(バギーは交差点では一番危ない、アスファルトの暑さなど)。
学校での状況はどうか。いじめが増加している、不登校の増加(不登校の予備軍は非常に多く中学生では10%)、子どもの負担が大きくなっている(学習面の問題の増加、学校で子どもが主役ではない、意見表明が尊重されていない)。
では代替養育関係はどうか。虐待の通告件数の増加、虐待死の数も減っていない、虐待に対応するソーシャルワーカーの数が少ない(イングランドの20分の1)、虐待から子どもを保護する代替養育の不足、代替養育の家庭養育が少ない(乳児からの長期にわたる施設養育が多い)。
保護の少なさと固定化がみられる。日本、国民1万人あたり保護児童数は17人(アメリカ66人、イギリス56人、ドイツ74人、フランス102人)、日本:要保護児童の人数の固定化(理由は施設依存)。
どうしたら子どもの直面している現実を変えることができるのか。