出自を知る権利、の情報を公的管理してほしい

日本産科婦人科学会は、第三者から提供された精子卵子で妊娠を目指す生殖補助医療について、提供者の情報の管理などを担う公的な機関の設置を国に求める提案書をまとめたという。

大学病院で、何人かの妊娠したい女性に学生の精子を提供することがあった。子どもが成長して、ルーツを求めようとしている子どもに対して、提供者の誰も名乗り出なかったという記事を昔読んだことがある。名乗り出るように準備して精子提供したわけではなかったから、しょうがないことではあるのだが、子どもにとっては知りたい情報だったろう。

話は変わるが、病院で出産して、自分では養育できないので経済的に余裕のある人に養育してほしい、と書置きをして姿を隠した外国人女性がいた。子どもは30歳近くなって、最近お母さんを探したいと思うようになった。書置きには外国人の女性の住所と名前が書かれていたから、その国の大使館を訪ね事情を説明した。パソコンに向かっていた大使館職員が、この人だろうかとプリントしてくれた。住所はわずかに違うが、名前は同じだった。その国では戸籍制度がなく名前を変えることもあるからその人であると言うことはできないが、と職員は話した。すぐにわかることに私は驚いた。日本でこんなに簡単にわかることはないだろう。その国の外務省から、その女性に手紙を書いて、日本に在住したことがあるか聞くことはできる、とのことだった。

イギリスの話だが、養子縁組した子どもに対して実親がコンタクトしたい場合、手紙を預かる機関がある。ある年齢になって子どもが親の情報を知りたい場合、そこに連絡してみる、ということが考えられる。また、その機関は、親に会いたいという子どもの相談にものる。

出自を知る、ということに関心をもつ時代がやっと日本にも来ようとしているようだ。