里親保障9

思索を続けてきて、熱意もなくなりかけているので、これを最後にしたい。話題にしたいのは里親保険。気になっているのは、預かった子どもに重い障害を負わせたり命を失ったりした場合、1億円前後の損害賠償が里親に課せられること。先に見たように、施設職員とは異なり、里親は丸腰に近い。そこで唯一可能なのは里親保険だと思う。
里親保険の問題はいくつかある。
一つは、誰が掛け金をはらうか。全国里親会で調べたところ、行政が全額払っていると答えたところは71.1%。公的な子どもを預かるわけだから当然行政が負担すべきだろうが、3割は行政以外で、里親が全額負担しているところもある。
それから、里親賠償責任保険の補償金額。全国里親会の3タイプは補償金額が1000万円のもの、5000万円のもの、1億円のもの、がある。行政が負担している場合、一番低いものでいいだろうと、1000万円保障のものが多くなっているように思う。先に見たように、事例的には少ないが、1億円前後のものがなくはないのだ。丸腰の里親としては1億円の補償をきちんと要求すべきだろう。でないと、人生が丸ごと借金返済にならないとも限らない。
3つめは、加入条件に縛りがあること。全国里親会の会員にならないと多くの場合保険にも入れない。自前の地域でやっている場合も少なくはないが、加入しないと保険に入れないのもおかしい。たとえば親族里親を会員の対象にしていない地域の里親会の場合、親族里親は保険に入れないでいる。全国里親会の保険ではなく、自前でやっているところは施設と共同して保険を作っているところがある。加入は当然のことなのだから、全国里親会の会員加入を条件にしない里親保険にすべきだろう。実は、全国里親会としても設立の目的の公益性から逸脱した事業なのだ。会として事務を担っているが、保険会社が自前で担ってやればいいものだ。
里親保険をめぐって、すっきりしない状況はやめるべきではないか。地域の自治体が、それぞれの責任において取り組むべき問題だと思う。そして、自治体が里親保障をしっかり担っていってほしいものだ。里親も自らの保障について自覚的であるべきだ。