里親保障5

里親とはなにか。正面から答えてくれるものがないので、里親手当ての性質からみてみる。
手当てと言えば多くの場合労働の対価だが、里親手当ては労働の対価ではない。行政もずいぶん悩んだ結果だと思うが、先に述べた憲法第89条もあるし、里親の活動に労働者性をもちこむのも問題がある、と考えたのではないか。
里親手当ての性格を説明しておく。
里親手当ては養育費とともに措置費として支給されているもの。
まず、児童福祉法第57条の5に「租税その他の公課は、この法律により支給を受けた金品を標準として、これを課することはできない」とある。
それなら措置費は課税の対象にはならないと判断すべきだ。ところが、平成24年12月26日付けで国税庁個人課税課から『児童福祉法の規定に基づき里親及びファミリーホーム事業者が支弁を受ける措置費等の取扱いについて』という通知が出ている。
これによると、里親への措置費は、児童福祉法第57条の5第1項(租税その他公課の非課税等)に規定する「支給を受けた金品」には該当せず、課税の対象となるとしている。
その理由としては、里親は「社会福祉事業とは位置づけられておらず、事業として行っているとまでは言えないことから、支弁を受ける措置費等については、その者の雑所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる」としている。
そして、「雑所得の金額は、1年間の総収入金額から必要経費の総額を差し引いて計算することとされていることから、必要経費を差し引いた結果、残額が生じない場合には課税関係は生じないこととなる」という。
確かに国民の税金から措置費が支払われていることを思うと、きちんと把握することは必要だが、生活にかかった費用からその子どもにかかった経費(養育費)を割り出すには、家計全体を正確に把握することが必要になる。
厚生労働省は『里親に支弁される措置費等に係る具体的な手続き』で「措置費等として支弁された金額(一般生活費等及び里親手当ての合計額)以上に必要経費が生じている場合には、この措置費等について雑所得の金額は生じません」。そして「税務署からの照会があった場合には里親委託に係る金銭の収支状況を説明する必要がありますので、収支状況の記録や書類を整理しておく必要があります。なお確定申告に係る具体的な手続きについては、最寄りの税務署に問い合わせください」としている。
里親手当てについても雑所得に含まれるので、里親会への参加、研修や勉強会、行事への参加費(交通費等を含む)、家族レクリエーションなどの経費が考えられるとしている。育児に関する人件費は含まれていない。

措置費の説明のために家計全体の把握が必要になるとしたら、そのための手間のための事務費が出てもよさそうだが、なんとも一方的な通知だ。そしてはからずも、里親は事業とは言えないのだから児童福祉法の57条にはあたらない、としている。児童福祉法の理念の部分(3条2項)では、家庭養育の困難な家庭にはそれに代わる家庭を用意するべきとして里親を重要視していながら、57条は里親家庭を除外するというのだ。

里親手当の考え方(金額の妥当性)については養育者がパートで働いた場合というのが考慮されているのにもかかわらず。

施設ではない一私人の里親をどう扱ったらいいのか分からないでいるようだ。主婦などの労働についてどう考えたらいいのか。イリイチのシャドーワークを援用して考えてみるべきだろう。また、家庭労働の外部化の動きもある。家事介護育児などを家庭労働から解放する動きだ。この辺は里親を考えるうえで参考にならないだろうか。