施設と里親

いま当センターの副理事長をしていただいている天農さん(里親)の論文(里親制度の成長と衰退の研究)を折に触れて思いだす。それは、今日においても里親制度に比べて施設のあり方が制度上有利なものとなっていることを思いださせるからだ。昭和26年の社会福祉事業法の成立と、家庭養護の思いが幻となった第5次児童福祉法の改正に関わるものである。

昭和22年に日本国憲法が公布されたが、これの89条で「民間への公的補助の全面禁止」がうたわれ、民間保護施設は危機に見舞われる。社会福祉事業法では憲法89条を曲げて社会福祉法人に公的補助ができるようになる。

ほぼ同時期に家庭養護を進めようと第5次児童福祉法の改正が目論まれていた。それが上記法律によって思いは達成しなかった。そこで彼らは児童憲章を作った、という一連のドラマのような動きがあった。

社会福祉法人が準公的な身分を手に入れ職員は準公務員の身分を手に入れたのである。たとえば、施設内で子どもが亡くなったことについても準公務員として責任が問われることはなかった(あかつき学園事件)。それに比べて、里親による子どもの死亡事故は里親個人の責任が問われる。

経済的な支援についても、施設には事務費が認められ公的な支出となっている。里親には名称だけ里親手当と言いながら、労働の対価ではないし事務費も認められない。

虐待が疑われた場合でも里親の場合は登録が抹消されるが、施設の登録抹消は聞いたことがない。

現在、施設から里親へという流れが進むかに見られている。しかしこうした基本的な考え方、権限や身分保障の問題も含めて議論されないと、問題は解決されないだろう。

http://fosterfamily.web.fc2.com/monthly/amano_file.html