当事者性について

さまざまな決定が当事者抜きで行われている、というのが日本の社会の特徴ではないだろうか。
このブログでも社会的養護の当事者の声を、とたびたび言ってきた。社会的養護下にいる、あるいはいた子どもたちのことだ。しかし、誰もが何かの当事者である。たとえば里親だって養育問題の当事者である。
当事者と言う時の特徴は、生きづらさを持つ本人のことだが、少数者でもある。マイノリティであって、この人たちの声が届きにくいという性格をもっている。だから権利擁護の問題と直結している。最近、学問として取り上げようという思いが広がっている。社会的養護の当事者ももっと自分たちの問題を語ってほしいと思う。
発達障害、あるいは障害者の当事者研究で知られる東京大学准教授の熊谷晉一郎は「社会の可変性と不可変性の境界線を問う」というような言い方をしている。
彼の研究分野の説明にはこうある。

当事者研究とは、障害や病気を持った本人が、仲間の力を借りながら、症状や日常生活上の苦労など、自らの困りごとについて研究するユニークな実践である。当事者研究統合失調症を持つ人々の間で行われ始め、徐々に、依存症や脳性まひ、発達障害など、様々な困りごとを持つ人々の間に広まった。我々は、仮説生成と検証、グループ運営技法、回復効果という、当事者研究が持つ3つの側面に注目している。具体的な研究トピックは、以下のようになる。
1.当事者研究による仮説生成とその検証:我々は「当事者研究」という手法によって、「情報のまとめあげ困難」が自閉スペクトラム症の根本的な特性であり、そこから知覚・運動レベルの問題や対人関係での困難が統一的に説明できるという仮説を提起してきた。現在はこの「情報のまとめあげ困難説」を、心理実験や、聴覚過敏研究、痛み研究などを通じて検証しようとしている。
2.当事者研究における語りの会話分析と自然言語処理当事者研究場面がどのような語用論的秩序を持っており、それが語りの内容にどのような影響を与えているのかについて、会話分析や自然言語処理のよって明らかにする。また、当事者の知を学術知と循環させるために、クラウドソーシングによる自動仮説抽出・検証システム構築を目指している。
3.当事者研究の効果に関する臨床研究:当事者研究に参加することが、参加者のWell-beingやrecoveryにどのような効果を与えうるかについての臨床研究に取り組んでいる。