里親の守秘義務

里親には守秘義務が課せられている。しかし、具体的な説明を受けたことはない。どのようなことか教えてもらいたい――という問い合わせをいただいた。多くの里親にとっても同じ思いだろう。

里親の最低基準に子どもと実親に関して守秘義務があると書いてある。なにを守秘するのか。個人情報保護法に定義されている個人情報についての守秘である。

ただ、児童相談所によっては乱暴な解釈をして、里親が社会活動などで目立つと、その里親家庭で暮らす子どもが里子であることが分かってしまい好ましくない。自粛するように、と言われる場合がある。子どもを人質にとって、里親はおとなしくしていろというような発言だ。そんな解釈にも黙って諾々としている。嫌われると子どもの委託がなくなるから、という。

守秘義務のなかで悩ましいのは写真の問題だ。最近は保育園や幼稚園からアンケートがきて、集合写真に写ってもいいですか、という。好ましくないと児童相談所から言われているので「だめ」に〇をつける。知り合いの里親家庭で、子どもが幼稚園から泣いて帰ってきたという。集合写真に入ってはだめだと先生に言われたという。かわいそうな話だと思う。またもっと悩ましいのは友達のお母さんが運動会などの写真を撮ってSNSにアップする。そこまで気を付けなくてはならないとしたら大変だ。

ケースによっても異なるだろう。28条措置、いわゆる被虐待児道の場合、親が探している危険性もある。そういう場合は、住民票なども閲覧不可の扱いにしておく必要がある。

新米里親で、初めて子どもが委託されて嬉しい余りSNSにアップしてしまった。それを担当職員に見つかり、措置解除されてしまった、という事例もある。注意レベルではないのかと思う。

措置解除、あるいは里親登録の抹消が簡単に行われているようにも思う。もちろん子どもの生命にかかわる問題のときに、のんびりしているのは問題だが、里親と児童相談所は信頼関係のもとにやっていくべきだろう。

高齢で里親登録を辞める、というのは問題ないが、この世界にあきれてやめていったり、やめさせられると思って里親登録を辞退する人が結構多い。しかしこうした人の声を大事にした、という話は聞いたことがない。こうした人の話にこそ、大事なことがいっぱいあるだろうと思う。ぜひ行政も里親会も、こうした人の声を里親制度に反映させてほしい。

近所から通報があって、里親家庭で虐待が疑われる場合にも、保育園や幼稚園から直接保護されてしまうケースがある。里親に連絡もないまま。通常の虐待案件と同様に考えているのかも知れない。「不適切な養育がありました」という内容の書面だけで多くの場合、説明もない。里親にも子どもにもヒアリングがなされていない。

ところで、里親サロンなどで子どもの話をしたい時がある。この場合、守秘義務を負った者同士なので、守秘義務の範囲ですがとして話し合えば守秘義務の範囲内である。医者が学校の先生、弁護士や警察も守秘義務を負っているので、この場合にも話していい。守秘義務を理解していない里親の場合、学校の先生にも話してはいけないと思っている人がいる。