児相による引き上げ

こんな記事を読んだ。珍しい事件としているが、とてもありがちのことで、心が痛んだ。

読売新聞 2005年9月22日朝刊
不当に”養育者失格”処分「里親、県を提訴へ」
里子の意思を無視した一方的な委託措置変更処分で里子を養育できなくなり、多大な精神的苦痛を受けたとして、浜松市内の里親らが来週にも県を相手取り、約750万円の損害賠償訴訟を静岡地裁浜松支部に起す。
里親が委託措置変更処分を巡って争う例は珍しく、里親が里子を養育できる地位が法律上保護されるのか、また、児童相談所裁量権はどこまで及ぶのかなど、裁判の行方が注目される。
関係者によると、里親は2000年3月に当時6歳だった女児を里子として引き取った。
ところが、昨年1月、里親が女児のついたうそに立腹して叱ったところ、女児が県西部児童相談所に駆け込んだ。
児相では「不適切な養育がみられた」として女児の一時保護を決定し、約2週間後に里親に対し里親認定の措置解除を通知した。
里親は何度も児相を訪れ、「しつけは厳しくしてきたが、虐待はしていない。娘を返してほしい」と懇願した。
ところが、児相は「娘は中度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)になっており、帰すことはできない。本人も帰りたがっていない」との説明を繰り返した。
あきらめきれない里親は、措置解除への不服申し立てを行ったが、児相では「処分は親権者である母親へのもので、里親は当事者ではなく、行政不服審査法の不服申し立てはできない」として受理しなかった。
その後も里親は、里子が入寮いている児童養護施設や児相に手紙やプレゼントを送り続けたが、すべて預り処分となっていた。
ところが、今年2月、女児が施設を脱走して、里親の元へ逃げ帰ってきた。児相や警察は未成年者略取誘拐の疑いもあるとして、女児を施設に連れ戻そうとした。
が、女児は嫌がり、また実母も返すことに猛反対したため、児相は仕方なく「一時外泊許可」扱いにして、里親の元に預けた。
その間、里親は女児の養子縁組を静岡家裁浜松支部に申し立て、5月に許可された。
女児は一時保護中にPTSDと診断されていながら、定期的な診察を受けていないことや、施設に入寮中に何度か里親の元に帰りたいと訴えたが、職員からは「無理だ。里親はもうあなたなどいらないと言っている」などと言われたという。
また、5度も施設からの脱走を試みたが、そういった事実はいっさい、実母にも里親にも知らされていなかった。
一方、里親は約4年間にわたる里子の養育期間中、児相からの訪問や助言指導などは、ほとんどなかったという。
里親の代理人である大石康智弁護士は「里親の養育に重大な不適切があったとは思えない。児相が十分な調査もせずに一時保護や措置解除の処分をとったことは、女児と里親への人格権の侵害だったと言わざるを得ない」としている。