思い返せば、平成28年6月に児童福祉法の改正案が国会を通過した。第1条では、従来の「子どもの愛護」ではなく「子どもの権利条約の精神にのっとり」となった。第3条の2項で、「代替養育の原則」が示された。家庭養育が明記された。しかし、現実はお寒いものだった。里親等委託率は当時17.5%。あまりにもかけ離れ過ぎていて、その2か月後に「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」ができて、平成29年8月に「新しい社会的養育ビジョン」が示された。多くの問題が指摘されているが、なかでも取り組む行程表が話題になった。①三歳未満の子については里親委託を5年以内に75%以上とする ②それ以外の就学前の子どもの里親委託は7年以内に75%以上とする ③学童期以降の子どもの里親委託は10年以内に50%以上にする、というもの。社会的養護関係者の間では大騒ぎになった。もちろん委託率の目標を定めるのは国ではなくて自治体である。それでこの目安に近づけるように自治体ごとの目標を作った。
で、3歳未満の子どもの里親委託率については、今年度末が期限となっている。しかし、誰も話題にしない。嵐の前のような静けさだ。施設関係者は話題にもしたくないだろう。そういう問題だからこそ、里親関係者は問題にすべきではないだろうか。
子どもの福祉の観点からいえば、乳児ほど家庭養育が重要となる。だからこそ、できるだけ早く目標を達成してほしい。それがほとんど無視されるような状態ではいけないと思う。
前回の国連子どもの権利委員会からの勧告でも、ビジョンの実現・達成を指摘されている。