母ではなくて、親になる

『母ではなくて、親になる』は山崎ナオコーラさんのエッセイ集。と言いながら読んではいない。タイトルがうまいと思うのだ。タイトルがうまいといえば、井上光晴の詩集『胸の小槌にしたがえ』もいいと思っている。こちらも読んではいない。ただ、言い得て妙、と思う。

『母ではなくて、親になる』には、最近の女性の気持ちがよく出ていると思う。仕事も家庭も、両方求められるなかでの子育てだ。子どもからしたら、母を求めがちに違いない。男性向けに、産後休暇が取れる時代であるが。

最近のジェンダー論争のなかで、ドキッとするタイトルだ。

さて、これに引っ掛けて、里親とはなんだろう。『母ではなくて、でも親でもない』ということになるだろうか。平均受託期間が4.5年。親の役割を担うには短すぎる。

養育者という便利な言葉もあるが、ひらべったくはない。子どもから見て里親とは。以前、児相職員に「これから里親のところに行くからね」と言われた子どもが里親宅にきて「砂糖がない」と言ったという。砂糖屋と間違えたという。

子どもの年齢が上になれば、犬や猫の里親を思い浮かべるかも知れない。日本だけでなく、里親にはペットの里親も意味として含まれているという。

この辺のことになると、ジェンダー平等の話から遠ざかる。『胸の小槌にしたがえ』、頭であまり考えない方がいいのだろうか。