本 『紅のトキの空』を思いだす

以前に読書会で読んだ『紅のトキの空』(ジル・ルイス著、評論社)を最近よく思いだす。
お母さんが家事をしないので、12歳の少女が懸命に家を切り盛りする。発達障害の感じのする弟もいて、家庭は破たん寸前。それでも3人で平和に暮らすことが少女の夢。どんなに大変でも家族こそが大事。
そういえば、発達障害的な弟の面倒を見る姉を描いた小説は多いと感じる。手のかかる弟は私しか養育できない、と思うわけだ。
やがて家庭に破たんがやってくる。マンションが火事になる。少女は里親家庭に一時保護される。最近よく思いだすのは、この一時保護のために受け入れる里親家庭の描き方。少女の反抗にも里親がきちんと向き合ってくれる。学校に通うのに、実子の男の子が、親戚の子だと友達に紹介する。弟は発達障害的なので施設に入れられ一緒に暮らすことができない。少女は弟の奪還に動く。
そういう、日本だったら即一時保護所、というところが、一時保護でも当然里親のところで、となっているのがいい。そして、必要な場合だけ施設。しかしそれでも弟にとっては暮らしにくいところ。
鳥がこの小説の重要なテーマにも材料にもなっている。それを考えながら読むのもいい。
子どもの現実を正当に評価し守ってくれる社会をうまく描いた小説といえる