現在の国のルールでは、保存期間は原則25歳までになっている。ところが自治体では、それを超えて保存しているところが多い。
養子縁組では18年の児童福祉法改正で永年保存と決められている。
子どもたちの出自を知る権利から言えば、保存期間の延長はとても大事なことだ。
古い話で恐縮だが、里親になりたての25年ほど前、児相を訪問したら郵便物の転記をしていた。なるほど、会社でも昔やっていたな、と思いだした。
いま、児相業務のデジタル化問題が話題になっているという。帰ってきてから報告書を書いたりして忙しいというが、いまやそんな業務をしている時代ではないだろう。訪問した現場で、タブレットで入力して、事務の効率化や案件の対応精度を高める必要がある。
どうも駆け足なら周回遅れのような気がしてならない。
しかし一方で、児相の人材不足は深刻なのだという。東京都など新たに児相を作る動きがあるが、採用が難しいらしい。これは我が地域、千葉県でも同じだ。
子どもの権利条約では、親子分離して帰れない場合は時間を定めて親権放棄させて養子縁組をするように、としている。
日本の場合は、子どもよりも大人の都合で養子縁組を行っているように感じられる。
数年前だったが、厚生労働省に、養子縁組をどう考えているか聞いたことがある。担当者曰く、養子縁組はできるだけあっせん業者にお願いするように考えている、と言っていた。
あっせん事業者は、生まれたばかりの子どもの養子縁組に特化している。
その結果、施設に10年以上いるこどもが10%を超えている。里親家庭はもっと多いだろう。安定のための環境から言えば、家庭に帰れない子どもについてはできるだけ早く養子縁組を検討すべきである。
長期に里親家庭にいる子どもたちがよく言うのは、いつまでここにいられるのか、ということ。曖昧なまま生活しているのでなく、早めに安定した居場所を提供すべきだ。
アメリカの州によっては、養親にも里親手当と同額の手当を出しているところがあるという。
子どものための養子縁組制度であってほしい。
国連子どもの権利条約の前回総括所見で、次回報告を2024年11月21日に求めている。まもなく、だ。
代替養育で、前回総括所見で指摘されていているのは、
(a)子どもを家族から分離するべきか否かの決定に関して義務的司法審査を導入し、子どもの分離に関する明確な基準を定め、かつ、親からの子どもの分離が、最後の手段としてのみ、それが子どもの保護のために必要でありかつ子どもの最善の利益に合致する場合に、子どもおよびその親の意見を聴取した後に行なわれることを確保すること。
(b)明確なスケジュールに沿った「新しい社会的養育ビジョン」の迅速かつ効果的な執行、6 歳未満の子どもを手始めとする子どもの速やかな脱施設化およびフォスタリング機関の設置を確保すること。
(c)児童相談所における子どもの一時保護の慣行を廃止すること。
(d)代替的養護の現場における子どもの虐待を防止し、これらの虐待について捜査を行ない、かつ虐待を行なった者を訴追すること、里親養育および施設的環境(児童相談所など)への子どもの措置が独立した外部者により定期的に再審査されることを確保すること、ならびに、子どもの不当な取扱いの通報、監視および是正のためのアクセスしやすく安全な回路を用意する等の手段により、これらの環境におけるケアの質を監視すること。
(e)財源を施設から家族的環境(里親家族など)に振り向け直すとともに、すべての里親が包括的な支援、十分な研修および監視を受けることを確保しながら、脱施設化を実行に移す自治体の能力を強化し、かつ同時に家庭を基盤とする養育体制を強化すること。
(f)子どもの措置に関する生物学的親の決定が子どもの最善の利益に反する場合には家庭裁判所に申立てを行なうよう児童相談所に明確な指示を与える目的で、里親委託ガイドラインを改正すること。
だ。
a)子どもを家族から分離する際、司法審査が求められている。考えてみれば当然のことではないだろうか。児童相談所の任意判断だけで行われる現状のやり方では納得できない親子分離が行われる可能性がある。そうした声が親の方から多く上がっている。
b)の「新しい社会的養育ビジョン」の計画的な進展も,どうも心もとない感じだ。
c)の一時保護の見直しも大きな課題だ。児童相談所に併設されている一時保護所。4割以上に併設されていると思われるから、これをなくすことがはたしてできるのだろうか。とはいえ、一時保護というあり方は戦後まもなくつくった制度という感じがする。
e)は、施設に財源をつけきたが、これからは家庭養護に振り向けろ、ということ。施設養育から家庭養育に変えようというわけだから、これも当然だろう。
簡単な変更ではないので、計画的な取り組みとなるだろう。さて、国はどう考えているのだろう。