論壇時評がよかった

朝日新聞3月30日の論壇時評が家族問題について論じている(林香里氏)。

まず、「子育て罰」について。子育てをすると親子とも制裁を受けるかのような苦しさを味わうが、それが日本ではとくに顕著だという。

理想の子どもを持たない理由として、子育てや教育にお金がかかりすぎるからと答えた人が77.8%もいる。子をもつとまるで罰金でも取られるかような支出が増えるイメージがある、としている。

日本の大学生で何らかの奨学金を受けている人は5割に上り、そのうちの9割が日本学生支援機構奨学金で、貸与型の奨学金は取り立ても返済の猶予・免除の条件も厳しい。さらに保証人制度は親に対して、子の学費が用意できないなら保証人となって責任をとれと言わんばかりの家族主義が前提だとしている。

アメリカの社会学者プリントンは、インタビュー調査で、日本人の多くが、稼ぎ手の男性と妻、少なくとも子ども1人といった家族のあるべき姿や男女の社会的役割規範に縛られていることを見出したという。

指摘のポイントとして、「子育て支援」と「子ども支援」が混同しているとする。親が子どもを育てることと、子どもが社会で健全に育つことを区別しないことは、女性と子どもを一体的庇護の対象として、女に子育てを押し付ける家父長制的なものの見方だとする。

児童手当が子育て世帯向けのユニバーサルな手当ではなくて少子化対策の便法として語られてきた歴史も、次世代育成の費用を社会全体で負担する合意形成を怠ってきた、とする。