『草花たちの静かな誓い』を読む

『草花たちの静かな誓い』(宮本輝集英社文庫)を読む。

ストーリーなど、うっかりばらすとこれから読む人の面白さを半減させてしまうので難しいが、結局、私が児相職員のセンスのなさに共感しただけのこと。それも舞台はアメリカなので、やっぱりアメリカもそうなのか、と感じた。

女の子は早産だったこともあって発育に遅滞がみられる。それを気にした母親が児童相談所に行くと、発達障害と診断されて治療を受ける。子どもはその治療をとても嫌がる。

それだけなのだが、非常によく分かる。児相ってその資格を有している人を採用するが、実践的な鍛えられ方をしていない。感性もセンスもない対応に里親はあきれてしまったりがっかりするのだが、そうした思いは無力感のように感じられてしまう。

もちろん、そうでない職員も多いに違いない。しかし、こうしたことに共感してしまう私がいる。

それにしても、いい本だった。里親にお勧めしたい。

コロナ、学生支援の対象者

ある団体が、社会的養護出身者で大学や専門学校に通っている人に、コロナでアルバイトも出来なくなり生活にも困っているようなので、経済的に支援しようという動きがあることはすでにこのブログで書いた。

その団体から相談を受けた。養子縁組の若者たちから問い合わせがあり、対象者に加えようと思うのだが、という。養子縁組は社会的養護ではないから、と対象外になることが多いので、とてもいいことだと感じた。

その際、特別養子縁組、普通養子縁組の区別は付けないつもりだが、措置委託後に養子縁組をした人だけを対象にしたいがどう思うか、と聞かれた。どうやら、措置から養子縁組になった人たちだけを対象にしたい考えのようだ。

個人的な意見としては、どのような経緯があろうとも、養子縁組となっている子どもたちすべてを対象にすべきではないか、と話した。措置かそうでないのかは子どもの側の事情ではないのだから。参考にする、と言って電話はきれた。

このような相談を受けたのは初めてだ。

常々、社会的養護から外されている養子縁組の子どもたちを残念に思ってきたが、こうした支援の対象に加えようとする人たちが出てきて、ありがたいと感じた。

同時に、これから養子縁組を増やしていこうという国の政策があるのなら、もっと養子縁組家庭への支援が充実しないといけない。ルーツの問題や思春期の特有の課題に、養親だけでは手に余る。

里親関連の書籍をお譲りします

会社を辞めたころ、里親支援が児童福祉法で法定化された(平成20年)。里親から里親支援に立場を変えて10年以上活動をしてきた。この間、疑問に思ってきたのは、里親支援と言いながらほんとうに里親家庭の側に立っていただろうか、ということ。近年はフォスタリング機関とか、あきらかに里親の支援から離れつつあるのに、包括的里親支援機関と「翻訳」している。

そろそろ若い人たちにバトンタッチする時期なのかも知れない、とコロナ自粛をしながら考えた。

そこで手元の本の整理から始まった。まだまだあるが、まずはスムーズにやれるかどうか実験。

http://fosterfamily.web.fc2.com/book_kino/bookkino.html

里親養育における親子関係調整及び家族再統合支援のあり方に関する調査研究

今年3月、㈱政策基礎研究所から「里親養育における親子関係調整及び家族再統合支援のあり方に関する調査研究」報告書がでた。

https://www.mhlw.go.jp/content/000629052.pdf

これまでの児相の考え方は、地域によっても異なるが、措置解除後は里親は手を出さないでほしい、というスタンスだった。ところが児童福祉法の改正で、里親も親子の再統合に協力するようにと定められた。

どんなことになるやら。

5月20日発行の『里親だより』(124号)で、アメリカでの「里親と実親の交流」についてIFCA代表の粟津さんにインタビューした。結論的には、里親への子ども委託時から実親とコンタクトをとることが望ましい、という感じだった。

しかし里親は養育で手一杯になることも多いわけだから、里親支援機関のフォローが重要になる。

方向としては賛成だが、子どもや実親の再統合支援については多くの課題があるように感じられる。

里親家庭の出口戦略

コロナの出口戦略が話題になっている。

このブログをやっているせいか広域の里親から相談を受ける。それで思うのが里親の出口戦略(満年齢による子どもの措置解除)についてだ。

子どもが進学するに際しては20歳の誕生日前日まで措置延長することとなっている。しかし、簡単には措置延長してくれない自治体がある。3か月ごとの更新を前提にする措置延長だったり、定員制をとっていてもう満杯になったとか。

もちろん国はルールは作るものの実施主体は自治体で、運用は自治体に任されている。でも、どこに住むかで子どもの処遇が違ってしまうのは問題だろう。一度、全国の里親会を対象に、措置延長の実施状況についてアンケートをとってほしい。

それから、大学や専門学校への進学に関して、今年度から国が給付型の奨学金を充実させている。社会的養護下の子どもについては勉強のできるできないにかかわらず給付型の奨学金を受けることができるはず。勉学の意思を作文などで確認することにはなっているが、成績に関する要件は決められていない。

社会的養護下の子どもたちは一般に低収入で、それは低学歴に起因していて、家庭内で連鎖する。親が低学歴、低収入の場合は子どももそうなってしまう。こうしたことを打開しようというのが社会的養護の場合の、この給付型奨学金だ。

ところが先日聞いた里親が言うには、高校の先生が子どもの成績を理由に申請を認めなかった、という。

里親にとって、子どもの出口戦略はそんなに経験豊富ではないはず。このところ状況も刻々変わる。理解しにくいことかもしれないが、ぜひ子どものために体をはって、措置の延長、給付型の奨学金の確保をお願いしたいもの。

さらに言えば、22歳の年度末までの経済的支援も制度化するようにもなっている。

慈恵病院の妊娠相談、過去最多

こうのとりのゆりかご赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院・蓮田副院長のコメント。

4月は妊娠相談窓口に過去最多となる75件の中高生からの相談が寄せられた。新型コロナウイルス禍による休校や自宅待機が続く中、望まぬ妊娠が増えることに懸念も示している。

コロナが感染した、していない、で一喜一憂しているあいだに、子どもや若者に災難が降りかかっていると思う。