『悦楽の園』(木地雅映子)を読む

若干知恵遅れとも思われる少年が女性に質問する。「オレ、ずーっと、いるから、うまれてくると、思って⋯ちゃんと、おとうさんとおかあさんとで、ほ、ほしいって思っ…て、なんか、くださいっておいのりとかして、つくって⋯だからイノチが、はいるんだ、と、おもって⋯」で、「でも、いらなくても、うまれたりするの?」と勇気をもって尋ねると、女の人は「するわ」とすげなく言う。「だれからもほしがられない、必要のない子供がうまれてきちゃうこと、この世界には、いっぱいあるの」。子供の顔はみるみる歪んで、まるでしわくちゃになった(ジャイブ刊 53P)

生まれるって本当に不思議なことだ。この本には、望まれないが、生き生きと暮らす子どもたちが多く登場する。

次の章では少女が思いを語る。「あたし、初めからこんなふうじゃなかった。昔はもっと、ふつうだったような気がする。人間って、みんなひとりいっこずつの体を持っていて、独立した個体のように見えるけれど、特別な目でみると、全員、根っこみたいなもので繋がっていて、その全員でいっぴきの生き物だったりするんじゃないだろうか」(55P)

ピュアな考えをすれば、まぎれもなく正しいことのように思える。まだ読み始めたばかりだが、そして近刊『ぼくらは、まだ少し期待している』を読もうと思って、その前に前作を読もうと手に取ったのだが、面白い。