『ケアの形而上学』森村修 (著)

ケアを形而上学的に考えたら、という本。下記のような内容。

「ただそこにあること」こそケア。愛猫の看取り、父親の認知症、先輩の孤独死、友人に教えられたアート作品―著者が関わる人々や環境がもたらした感慨によって深まる「ケア」の形而上学的問いは、フッサール富士谷御杖マラブーといった碩学の考察を引きながら刺激的に展開し、知的興奮を呼び起こさずにはいられない。

目次

はじめに――〈存在することのケア〉に向けて
◆第1章 「暴力被害者」のケア――「生き延びる(survival)」ことの倫理
第1節 〈生き残ること〉と〈生き延びること〉
第2節 子ども虐待という〈社会・政治的暴力〉――「トラウマ」の連鎖
第3節 「新たなる傷つきし者」の出現「社会・政治的トラウマ」の問題
第4節 〈情動を抱える生〉の〈ケアの倫理〉
◆第2章 「生き延びる者」へのケア――長寿高齢社会の現実
第1節 哲学的課題としての「認知症」――哲学者マラブーの挑戦
第2節 「認知症」が問いかけるもの
第3節 「社会的疾患」としての「認知症
第4節 「認知症」における〈こころ〉と脳
第5節 認知症ケアの倫理
◆第3章 〈社会的孤立者〉へのケア――「孤独死」社会における倫理
第1節 「孤独死」の現在
第2節 「ひとりで死ぬこと」の意味「スピリチュアリティ」の〈ケア〉
第3節 「何も共有していない者たちの共同体」の倫理
第4節 〈他者としての死者〉を抱えて〈生き延びる〉こと
第5節 アポリアの経験――フロイト「喪の作業」批判
第6節 喪の倫理〈死者〉を担って「生き延びること」
◆第4章 〈からだ〉と〈ことば〉のケア倫理
第1節 〈からだ〉という問題圏――〈からだ〉は所有物か?
第2節 東洋的心身論の試み――湯浅泰雄の〈身体〉論
第3節 〈身〉と〈言〉――市川浩の「〈身〉の哲学」(1)
第4節 〈身〉と〈こころ〉――市川浩の「〈身〉の哲学」(2)
第5節 〈身〉と〈情〉――富士谷御杖の「言霊」論(1)
第6節 〈言霊〉の〈力〉――富士谷御杖の「言霊」論(2)
◆第5章 「生存の美学」としてのケア――〈ケア〉が〈アート〉に出会う〈場所〉
第1節 「アウトサイダー・アート」と「アート・セラピー」
第2節 ダーガーの生きた世界「アート作品」としての生
第3節 他者への配慮──レベッカ・ブラウンの「贈与」
第4節 行為の価値――グレーバーの価値論について
第5節 贈与としてのケア/ケアとしての贈与
第6節 〈ケア〉としてのアート/アートとしての〈ケア〉
おわりに――「ケアとは、アナキズムでなくてはならない」