陰のパンデミック、DVや虐待

大学をやめて10年くらいたったころ、艶本研究家の斎藤夜居さんと懇意になった。個人の葬儀屋をやっていたが、2人の娘さんが年頃を迎えるので自分の蔵書をもとに古本屋を始めた頃だ。会社の帰り、店先に腰を降ろしていろいろな話に興じた。内田百閒の本に出会ったのも齋藤さんを通じてだった。

私が全共闘世代だと話していたら、あなたたちが闘っていた頃にこんな本が多く出ていた、と店のエロ本コーナーを指さした。警察が全共闘に目が向いている頃、規制の緩んだエロ本業界は息を吹き返したらしい。

こんなことを思いだしたのは、このコロナ騒ぎからだ。毎日のようにニュースになっていた虐待の報道が見られなくなった。関心がすべてコロナに向けられている。

国連は、新型コロナの世界的流行でDVや虐待のリスクが高まると警鐘を鳴らしている。陰のパンデミックと呼んでいるが、確かにこれらのニュースは消えて、どのチャンネルを見ても安倍首相の記者会見ばかり。

こういう時こそ、家にこもった人たちに、DVや虐待のリスクが高まっていることを報道してほしい。