社会的養護当事者の文化『ひょっこりひょうたん島』

日本では社会的養護の当事者の声を聞く習慣があまりない。特有の文化があると思うのだが。

『東北ルネサンス』(小学館文庫)という本で、赤坂憲雄さんが井上ひさしさんにインタビューしている。

ひょっこりひょうたん島』の話で、赤坂さんが「ひょうたん島」はいろいろなものを捨ててきたアジールのような島ですね、と切り出す。アジールとは世間から遮断された領域のことである。

知っている人も多いと思うが井上ひさしさんは児童養護施設で生活していたことがある。小説もある(41番目の少年)。この長寿番組の企画段階ではNHKディレクターの武井さんという人が関わっていて、この人も「戦争でご両親を亡くされて親戚の家に引き取られて育った」し、ともに関わったライターの山元さんも「カトリック系の児童養護施設育ち」。3人とも「同年輩の人と比べて、少し早く世の中の荒波をかぶっていたから、辛抱強いし、粘りがありましたし、笑うということが生きていくうえでどんなに大事か身に沁みて知っていた」だから「ひょうたん島に登場する子供たちが親のおの字も言わないのも、3人の境遇の当然の反映でした」と井上さんが語る。

ひょっこりひょうたん島』には、シカゴのギャングとかインチキな大統領とかめちゃくちゃな登場人物の集まりの物語。そうか、あの時代を一世風靡したテレビ番組もこうした人たちによって作られた、ひとつの文化なのかと、腑に落ちた。